社内報のつくりかた
目次
こんにちは!かわうそです。今回は「社内報は誰のため?何のため?」ということについて、初心に戻って考えてみたいと思います。社内報担当になった当初は、とにかく仕事を覚えるのに必死でした。会社の組織や事業の内容・業績特有の専門知識など、勉強しなくてはいけないことも多く、毎号発行されるたびに「やっと終わったー!」と達成感を味わっていたのですが、少し慣れて余裕が出てくると、実はあまり社内報って読まれていないのでは?…という問題意識が芽生えてくるようになりました。
社内報の内容や仕事の進め方について「このままで良いのか?」という疑問が浮かんできました。記事の内容も予定調和になりがちで、そつなくこなすだけで良いのか…と自問自答を繰り返す悶々とした日々。そんな悩みや疑問をどう克服していったか、当時を思い出しながらまとめてみました。
建設会社の広報室に勤めていた私は、広告宣伝業務と兼務で社内報でもいくつかのコーナーを担当していました。最新技術が導入されている建設現場などを取材し、写真や映像も全部自分で撮影して、社内報の原稿にまとめる仕事はとてもやりがいがあったのですが、ある日ふと思ったのです。外に出て営業をするわけでもなく、顧客と直接対話をするわけでもない、設計や開発部門との接点もない…社内報の仕事は会社の業績にどれほど貢献しているのか?自分たちのやっている仕事って誰かの役に立っているのか?という問題意識です。
最前線で頑張っている社員に有意義な情報をしっかり伝えられているのか?と考えてみると自分の仕事に自信が持てず、あまり読まれていない社内報なんて発行しなくても誰も困らないのではないか、経費の無駄遣いなのでは?…とさえ思うようになりました。社内報は会社の事業や業績を記録として残す、社員のモチベーションアップやコミュニケーション活性化をはかるという使命を担っていながら、実際には社内報が社員から読まれているわけではないという現実…。誰かの机の上にずっと置かれたままの社内報を見るたびに、無力感のようなものを感じるようになりました。
一方、社内報と兼務で担当していた広告宣伝の仕事は、社会全体に会社のブランドを認知してもらうことでイメージアップにもつながり、媒体を選別して戦略的な広告出稿でお客様からお問い合わせをいだいたり、広告がきっかけでメディアからの取材が増えたりなど何らかの「手ごたえ」があったのですが、社内報は発行後も「あの記事良かったよ!」といった反応はほとんどありません。同期に聞いてみても反応が薄い…。そこで自分が担当している記事だけでも何か変えられないか、そのヒントを探すためにまずはバックナンバーを片っ端から読んでみることにしました。
先輩たちはどんな社内報を作り、会社の出来事をどんなふうに伝えてきたのかを勉強することから始めました。その時代の会社の気風や社員の気概も伝わってくるような誌面作りはとても勉強になりました。また業界を問わず他社の社内報も部内で回覧されているので、とにかく隅から隅まで読んで、自分の会社と何が違うのか、レイアウトやフォントの使い方も比較しました。
自分の会社の「らしさ」や「カラー」、アイデンティティやDNAのようなものを伝えるためにはどんな工夫をしたらよいのか?という視点でバックナンバーを読んでみると、自分たちが制作している社内報は毎号似たようなテイストの原稿が多く、記事を読んだだけでそこで働く人の姿やマインドが伝わりにくい社内報でした。誰が担当になっても一定の品質の社内報を作らなくてはいけないこと、客観性を保たなければならないことから、ある程度記事をテンプレート化しておくことは効率良く仕事をするうえで必要かもしれません。
しかし、具体性のある数字をタイトルや文章にバランスよく取り入れてインパクトをもたせたり、レイアウトを工夫したり、掲載する写真のカットやアングルを少し変えてみるだけでも、ずいぶん記事の印象を変えることができそうだということに気づきました。
例えば、毎年恒例のイベントを記事で取り上げる場合も、先輩や上司から「とりあえず1~2枚写真をおさえてきて、あとは去年の記事を参考にして書いてよ!」と軽~く依頼されることがあるかもしれませんが、去年の記事をなぞるのではなく、今の会社に必要な視点を意識しながら取材して記事を書くことが大切です。
社内報のバックナンバーを見ていると建設会社という業界の特性上、建築物や施工実績を紹介することが多いため、やや無機質な写真が多くなりがちです。また、重要な会議や研修などの紹介記事は会場の全体風景をおさめたショットが大半でした。社員の表情やその場の空気感が伝わるような写真が少ないことに気付いた私は、掲載する写真をちょっと工夫してみることにしました。
例えば部署紹介の記事も、わざわざ全員が集まって集合写真を撮るスタイルではなく、さりげなくその職場に溶け込んでいき、いつも通りに仕事をしたり打ち合わせをしたりしている自然な社員の姿をそのまま撮影するように心がけました。社員やスタッフが清々しい笑顔で話しているショット、ミーティングをしている場面、日常のリアルな仕事風景を1枚掲載すると、現場の雰囲気や働く人の真剣なまなざしが伝わります。
自分で出来る範囲のことから新しい要素を取り入れてみると、記事に掲載した部署や作業所の人から少しずつ反応が返ってくるようになりました。社内報に掲載された写真を記念にもらえないか…というリクエストをもらうことも増えてきました。そんな連絡をもらうたびに、小さな記事であっても「社員のやる気スイッチをさりげなく押す」ことが社内報作りの醍醐味なのかも?と思うようになりました。
また、小さなチャレンジの積み重ねは、同じ社内報担当者の間にも良い変化をもたらします。一人が試行錯誤をしながら良い記事になる工夫を始めると、他の担当者も自然と自分の担当記事をブラッシュアップして、読んでみたくなるような記事づくりに取り組むようになり、社内報も少しずつ活気のある誌面に変わっていきました。
地道に工夫を積み重ねること、改善を続けていくことは社内報の仕事に関わらず、どんな仕事でも大切です。でも何かを変える時は少し注意が必要です。ねらって奇抜なことをするのではなく、変化が良い効果をもたらすかどうかしっかりと考えなくてはいけません。つい意気込んで「何かエポックメイキングなことをしてみよう」「逆転満塁ホームランを打とう」と肩に力が入ってしまいがちですが、社内報は常に中庸なスタンスで、社員に必要なことをしっかりと具体的に伝えていくことが重要です。そんなバランス感覚も担当になって1年ぐらいたつとようやく身についてきた頃でした。
「さぁ、担当2年目になったらもっとクオリティの高い社内報づくりを!」と思っていた矢先、景気が後退し経費削減のため社内報もページ数を減らさなくてはいけなくなりました。ちょうどこの頃、WEBによる社内の情報共有化が急速に進んだころでもあり、印刷物としての社内報の役割も見直さなければならない時代でした。そこでどんな情報をどんなふうに伝えるかという原点に返って、社内報を全面リニューアルすることになりました。 ページ数が減っても、クオリティや情報量を維持しながら何を伝えていくべきか?より親しんでもらえる社内報にするためにどんな企画が必要か?いよいよ担当者全員で知恵を絞っていくことになります。リニューアルについての経験談はまた別の機会にお伝えしたいと思います。
社内報担当になってから、ずっともやもやしていた「社内報は会社の業績に貢献しているか?」という疑問ですが、1年間試行錯誤を重ねながらようやく一つの答えを見出すことができました。会社の業績には直接貢献していなくても、会社の看板を背負って働く社員のために、その会社で仕事をすることに誇りを持てるようなマインドを醸成することで社内報は会社に貢献できる!という確信です。
もちろん研修でも、社内報とはこういうもの、社内報とはこうあるべきもの…という説明を受ける機会はあると思いますが、「社内報はこのままでよいのか?…」と疑問を感じたら、社内報が社員にしっかり読まれているか?自分の会社らしさ、会社の良さを誌面で表現できているか?ということをもう一度よく分析してみる時間を持つことが大切です。そしてその会社で働くことの誇りや喜びが感じてもらえる内容となるようために必要なことを誌面に取り入れてみましょう。
疑問を持ったら、まずはしっかり社内報の内容やどんなふうに読まれているかリサーチをすること、分析をすること、新しい要素を取り入れてみること、その結果を検証してみることが大切です。まさに社内を対象としたマーケティングリサーチをするのと似た作業かもしれません。
一生懸命頑張っているわりに「社内報があまり社員に読まれていない…」と悩んでいる方は意外と多いのではないでしょうか?そんな方は、まず初心にかえって「ウチの会社ってこんなところいいな」と感じたことはどんなところかをもう一度よく思い出してみてください。自分が何故その会社で働いているのか?その会社に勤める人に魅力を感じたからでしょうか?その会社の将来性でしょうか?会社の魅力を伝えるために、社内報はどんな工夫ができるか?を考えてみましょう。答えは会社によっても、担当者によっても違うと思います。広報の仕事、社内報の仕事は正解がひとつではないところが面白いところです。悩んだり考えたりした結果、思いついたことはどんなに小さなことでも良いのですぐに実践してみましょう。誰よりも会社や社員をしっかりと見つめてみると、きっと何か良いアイデアが浮かんでくるはずです!
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