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就活生にとって、最大の喜びは内定だと思われがちです。しかし、実際には内定が出てから気分が沈んでしまうケースも少なくありません。いわゆる「内定ブルー」の要因としては、新しい環境への不安や就職先への不満などが隠れています。企業側はせっかく獲得した人材が別の道を選ばないよう、入社までのあいだも丁寧にフォローしていく必要があるでしょう。
この記事では、就活生が内定ブルーになってしまう原因や対処法について解説していきます。
「内定ブルー」とは、一度企業から内定をもらったはずの就活生が、本当に入社するべきかどうかを思い悩んでしまう現象です。結婚前に女性がなんとなく不安を覚えてしまう「マリッジブルー」をもじって生まれた言葉です。人生で新しいステップを踏み出すとき、不安やおそれを抱いてしまうのはごく一般的な感覚と言えるでしょう。そのため、一時的に内定ブルーを感じていても、入社とともに気持ちを引き締め新社会人として成長していく就活生が大半です。
ところが、内定ブルーをこじらせてしまい、内定から入社までの間にうつ状態にまでなってしまう就活生も少なくありません。こうしたタイプは、このまま今の内定先に勤めるのが本当に正しい選択なのかと本気で迷っています。入社までの時間が長いと特に思いつめてしまい、仕事のモチベーションを低下させてしまうこともありえます。さらに症状が進んだ就活生は、内定を蹴って別の選択肢を探し求める可能性すら出てくるのです。
「内定ブルー」そのものは、時代を反映していきなり生まれた現象ではありません。今も会社員として働いている人の多くが、就活生時代に内定ブルーを経験したでしょう。ただし、かつて「就職氷河期」と呼ばれた時代では「就職できたことが幸運」という考えが強く、内定ブルーを口に出すのは憚られてきました。しかし、就職難が改善されていき、逆に新卒の「売り手市場」が強まっていくと内定ブルーは顕著になっていきます。就活生の可能性が広がった状況だからこそ、内定ブルーは企業が対峙すべき課題なのです。
就活生が内定ブルーになる原因はさまざまです。企業が内定者をフォローしていくためには、彼らに迷いが生じる原因をしっかりと理解しておきましょう。
まず、最も顕著なのは「新しい環境への恐怖」です。学生から社会人になると、環境は大きく変わります。これまで学生として甘く見られていた部分も言い訳がきかなくなります。また、自由時間がなくなり、社会的責任が重くなることへの不安も出てくるでしょう。そのため、就職先がどこだろうと関係なく内定ブルーは起こりえると言えます。
一方で「就活の未練」も内定ブルーの原因です。第一志望の企業に落ちてしまったり、妥協して志望した企業から内定をもらったりした就活生は、未練を残したまま社会人となります。もう少し頑張れば希望の業界に行けるのではないかという思いが、内定先への就職をためらわせるのです。
ただし、単に「覚悟が足りない」だけの場合もあります。社会人として規則正しい毎日を送っていくだけの心構えができておらず、就職を先延ばしにしたいという気持ちが憂うつへとつながっていきます。
そのほか「自分へのコンプレックス」も内定ブルーの引き金です。未だに社会人としての能力が身についていないと思っている就活生は、必要以上に入社後の生活をおそれてしまいます。また、内定先の業務内容を難しく感じ、活躍できるイメージが持てないときにも気持ちは沈んでいくでしょう。
入社までのあいだ、アルバイトや説明会で内定先に顔を出し、内定ブルーになるケースもあります。職場の雰囲気や先輩の態度が予想と違ったときに「本当にここでよかったのか」との考えがよぎってしまうからです。
内定者が内定ブルーになり、暗く落ち込んでいる場合は企業側が積極的にメンタルケアをしなければいけません。しかし、内定ブルーの原因を見誤ってしまうとまるで的外れな言葉をかけてしまい、逆に内定者から信用をなくすおそれも出てきます。まずは、内定者がどうして入社に迷っているのか正しく見極めるようにしましょう。場合によっては、ポジティブな向上心の結果として内定ブルーになっているケースもありえるからです。
例えば、ほかにやりたい仕事が見つかった就活生は、現段階での内定先を考え直すでしょう。現実逃避としてほかの内定先を探しているのではなく、はっきりとした目的があっての行動なら成長意欲の高い人材だと言えます。また、就活を通して次第に人生計画が見えてくる就活生も少なくありません。こうしたタイプも、内定後に新しい目標を自覚することがあります。彼らはビジョンを持って努力を続けられる人材であるため、企業としては引き止めたいところです。
そのほか、内定をもらったことで心に余裕が生まれ、もう一度自分の将来を考え直す就活生もいます。その結果「やはり第一志望の企業にチャレンジしたい」との思いを強くするパターンもあります。このタイプも、企業が放置してしまうと内定を辞退してしまいかねません。彼らを慰留するには、自社でのやりがいをしっかり伝える必要があります。入社までの期間にもコミュニケーションを取り、心変わりがないかを見守りましょう。万が一、入社の意思が揺らいでいると気づいたら、すぐに対策することが肝心です。
内定ブルー対策として企業側が行うべきなのは、なるべく内定者との接点を増やしていくことです。
例えば、入社までのあいだに懇親会を設け、先輩社員と内定者に交流してもらいましょう。懇親会は現場の人間に直接、不安や悩みを相談できるチャンスにもなります。また、先輩社員との距離が縮まれば会社そのものにも思い入れを抱いてくれます。懇親会が難しい場合でも、個別の面談を開くことは可能でしょう。高圧的にならないよう気をつけながら、内定者の本心を探っていきます。もしも入社を迷っていると返ってきても怒らず、このまま入社するメリットを冷静に伝えるようにします。
次に「定期的な連絡」も内定者からの信頼につながるポイントです。あまりにも長く放置されていると、内定者は「自分は関心を持たれていない」と感じ始めます。また、入社の準備として何をすればいいのかもわからないため、パニックになりがちです。内定先への不満が芽生えてしまうと、ほかの企業がより魅力的に見えてきて内定ブルーは加速します。些細な内容でいいので、電話やメールで内定者をケアしていきましょう。
そのほか、内定者が能力に自信をなくさないよう、説明会やセミナーをセッティングするのも効果的です。さらに、内定者が会社に対する疑問を抱く前に自ら情報を開示していきましょう。このとき、社内報は非常に役立ちます。社内報からは会社の日常が伝わりますし、先輩社員の人柄や具体的な業務内容を知るための資料にも使えます。採用過程で内定者に配ることも考慮して、社内報は定期的に充実した内容で発行しておきましょう。
内定ブルーが生まれる状況はさまざまです。また、深刻に悩んでいる内定者もいれば、自然に治るレベルの内定者もいます。内定ブルーに対処するには、内定者の事情に応じた方法を用意しておきましょう。また、内定者がほかの選択肢を考えなくなるような取り組みを日常化することも大切です。内定者向けの懇親会、説明会、内容が面白い社内報などは内定ブルーが発覚する前から準備しておきましょう。
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