インナーブランディング
2019.03.19
2019.01.15
企業を活性化させ、成長させるために「エンゲージメント」という考え方が注目されています。エンゲージメントとは、社員が会社に対して抱く信頼感、帰属意識などを意味する言葉です。これは企業の業績にも良い影響を与えますから、今後の世界で企業が生き残るためには不可欠でしょう。しかし、残念ながら日本企業の社員のエンゲージメントは低いという調査もあります。
そこで、エンゲージメントとはどのようなもので、向上させるためにはどうすればいいのか解説します。
エンゲージメント(engagement)とは「婚約」「約束」という意味をもち、人が企業やブランド、サービスなどに抱く信頼感を示す言葉です。企業の人事関連の用語として使われるときは、社員が会社に対して感じる「愛着心」「愛社精神」を表現します。言い換えれば、企業と社員のあいだの「絆」「信頼関係」を意味する言葉です。エンゲージメントが高い社員とは、会社のビジョンに共鳴し自発的に会社の仕事のために力を出そうと考える人材であり、周囲との人間関係も良好でコミュニケーションがうまくできている人だと言えます。
これまでは、社員が企業に対して抱く感情は「満足度」という指標で示されることがありました。満足度は、企業のなかで社員自身が感じる居心地の良さと言えるでしょう。満足度が高いと、ぬるま湯に浸かったような状態で現状維持を目指す社員も出てきます。革新的な変化を遂げていかなければ企業を存続させることすら困難になってきた現代では、社員が周囲の環境に満足していることは、必ずしも好ましいことではなくなっているのです。しかし、エンゲージメントの高い社員は変化をおそれず、問題を見つけて積極的に改善していこうとします。そこが、エンゲージメントと満足度との違いです。
高いエンゲージメントは、優秀な人材の流出を防ぐ働きがあります。終身雇用制の崩れた日本企業では、ひとつの会社にこだわらずに、好条件を提示されれば転職をためらわない社員が増えてきました。しかも、優秀な社員ほど、他社からの転職の誘いを受けやすくなっています。しかし、会社に対する愛着心や信頼感が強い社員、つまり、エンゲージメントが高い社員は会社をなかなか辞めないことは容易に想像できるでしょう。逆に、エンゲージメントが低い社員はためらわずに転職しがちで、企業の離職率は高くなります。
そのため、人材の流出を防ぐ手立てとして、エンゲージメントを高める意味があるのです。社員が企業に対して愛着を感じていれば、より高い報酬や地位などに目もくれずに自社に残ってくれるからです。企業は優秀な人材を確保するために、自社に対して強い愛着心や信頼感を抱かせるようにすべきでしょう。
また、高いエンゲージメントによって、生産性が向上することもわかっています。企業理念に共感を持ち、同僚や上司への信頼感があるため士気が上がり、チームとして高いパフォーマンスが期待できるからです。エンゲージメントの高い社員は、個人としても自発的に自分の目標を立てて実行する傾向も見られます。
アメリカのギャラップ社が行った、社員のエンゲージメントに関する調査で、日本の企業にはエンゲージメントが高い社員は6%しかおらず、欧米企業の32%に比べると低い水準だったことが判明しました。エーオン・ヒューイット社の調査でも、日本の社員のエンゲージメントは世界的に見て低いという結果が出ています。なぜ、日本の社員のエンゲージメントは低いのでしょうか。
日本の会社では、上下関係が大きな意味をもち、職場で本音のコミュニケーションができにくい雰囲気があります。一方で、個人の責任感は強く、周囲の人に合わせて仕事をしようとします。厳しい経済状況の下では、ほかの社員と同じように残業をこなしながら、目の前の仕事を片づけていくことが最優先になっているでしょう。社員は視野が狭くなり、会社のなかで自分が果たしている仕事の意味を見失って仕事への嫌悪感を抱きがちです。そのため、会社に対する愛着心や信頼感はあまり強くないと考えられます。
そういうと、昔の日本の会社員は会社への忠誠心(ロイヤリティ)が強いことで知られていたことを思い出す人もいるでしょう。たしかに、かつての日本企業では、新卒一括採用、終身雇用制、企業内組合などによって、社員の忠誠心は高く保たれていました。しかし、エンゲージメントは忠誠心とは異なるものです。忠誠心とは、強い権力を持つ会社に対して、社員が身をささげて働く心理です。殿様の命令で切腹も辞さない武士の姿に象徴されるような心といってもいいでしょう。
一方、エンゲージメントは、自分の意志、自分の考えで会社への貢献を決める自発的な態度に表われます。過去の日本の企業は、企業の方針に素直に従う社員を高く評価し、自発的な取り組みをする社員に対する評価は決して高くなかったでしょう。そのため、これまでの日本企業ではエンゲージメントの高い社員は少なかったとも思われます。
エンゲージメントが高くなることによって、社員の行動に次のような変化が生まれます。まず、企業への信頼度が高くなるため、同僚や上司との関係がよくなり、互いに協力できるようになります。職場の雰囲気もよくなり、オフィスには活気が出るでしょう。さらに、社員は命令で仕方なく働くという義務感から解放され、会社の理念の実現や業績の向上のために自分は何をすればよいのかと考えるようになります。目先の仕事や狭い範囲の人間関係にとらわれず、広く長期的な視野を持ち、業界全体の動向にまでもアンテナを張り巡らせる人も出てくるかもしれません。このように、仕事に積極的に取り組む社員が増えてきて社内が活性化するのです。
社員のエンゲージメントを高めるために、企業ができることを考えてみましょう。まず、社員と定期的に面談し、社員が抱える問題を把握することが重要です。現在の業務内容は自分の希望に沿ったものなのか、ほかの社員とのコミュニケーションがうまくいっているかなど、いくつかの質問を用意して社員の現状と悩みを把握しましょう。社員の問題を把握できたら、そのまま放置してはいけません。上司から問題の解決に向けての対応策を示すことが必要になります。
社員のエンゲージメントは、上司によって大きく左右されます。社員を励ましてやる気を引き出す管理職がいる職場ではエンゲージメントが向上します。管理職はコーチングの手法を取り入れて、部下のサポートと教育ができるような訓練を受けるようにしましょう。社員によい影響を与える管理職を育成するために、管理職の評価システムでも、部下のエンゲージメントを高めたかという指標を取り入れる必要があると言えます。
さらに、社員の能力や得意分野に応じて適切な部署に配置する、タレントマネジメントの考えを取り入れましょう。一人ひとりの社員の能力を活かそうとすることで、社員のエンゲージメントは高まります。
以上のような手段によって、社員は受動的に仕事を与えられる立場から、能動的に自分の仕事に取り組むスタンスを取るようになります。より自発的に業務に取り組めるようにするためには、企業内での情報を共有し、社員にも権限を持たせるような環境を整えることも必要でしょう。
社員が自分の仕事を自分のものとして積極的に取り組めるようになると、社員のやる気が引き出され離職率が低くなる傾向があります。もし、これらの方法を行っても効果が見られない場合は、方法を見直して改善していくことが必要です。社員の努力を本当に認めているのか、キャリアアップの道筋を提示できているのか、社内の人間関係がぎすぎすしていないかなどを検証しながら、改善を図ることが重要でしょう。
エンゲージメントが高い社員が増えると、離職率が低下し、優秀な人材を企業内に確保できるようになります。社員の自発的な行動によって生産性が向上し、企業の業績がアップする結果にも繋がるでしょう。事実、日本の複数の企業では、すでに社員のエンゲージメントを高める取り組みを行い、社員相互の関係性がよくなっています。社内の人事対策として、エンゲージメントの考え方を取り入れることが企業の活動にプラスであり、今後ますます重要になっていくでしょう。
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