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企業にとって社員が働きやすく風通しのよい職場づくりや、仕事へのモチベーションを維持できるような環境づくりは重要です。そのための取り組みとして、一般的には社内のレクリエーションや定期的な人事異動が行われています。これらに加え、注目されている企業の環境づくりのひとつに組織開発があります。
この記事では、組織開発とは具体的にどのようなものなのか、成功させる条件やプロセスについて解説します。企業の広報や人事に関わる方は一読してみてください。
これまでは企業の組織を改革するために、戦略や制度のような組織のハードな側面にスポットを当てていました。これに比べ、組織開発では社員やそれぞれの関係性といったソフト面に働きかけることを重視しています。組織開発は組織に内在するエネルギーや主体性を引き出す機能であり、人と人の「関係性」の変化や「相互作用」が組織を変化させていくという考えです。その取り組みは人事や広報などの第3者が積極的に現場へ介入し、組織を変革していくためのアプローチを指します。リーダーだけを対象にしたものではなく、社員一人ひとりに目を向け、潜在能力を引き出す方法として注目されているのが組織開発です。
組織開発は1950年代のアメリカで生まれました。アメリカは多民族国家という性質上、組織を束ねるための組織開発が必要だったのです。日本には1965年に導入されましたが、当時は理解を得られず浸透しませんでした。その理由のひとつとして、組織開発自体が当時の日本には不要であったという見解があります。1970年代~80年代の日本は終身雇用であることが当たり前の時代であり、一緒に働いている人たちは長い年月にわたって付き合っていくという意識が強かったのです。そのため、人間関係に対する配慮は元々強く、組織開発という概念は特に必要とされませんでした。日本では組織の力より個人の力を高めていくことが重要だと考えられ、長い間人材開発に注力されてきたのです。
1965年に日本へ組織開発が導入されたときは浸透しなかったのですが、日本での働き方が変化したことで注目されるようになった背景があります。その変化とは、日本の働き方や仕事が「個業化」「高度化」したことです。ITや成果主義の導入の影響で、一人で仕事をする機会が多くなりました。そのため、本人だけしかわからない仕事も増えています。社員それぞれの業務が異なるなど、同じ環境で働いていても、ほかの社員の仕事内容を把握できていないケースもあります。このような状態は、企業にとっても働く社員にとっても不健全で好ましいものではありません。
外国人スタッフの増加なども、組織開発が必要になった理由のひとつです。生まれが異国であるため価値観や考え方も異なり、協力して仕事を進めていくための取り組みが求められています。
IT化が進んだ企業の場合、コンピュータに詳しくない上司が部下の仕事内容について理解できていないケースもあります。しかし、マネジメントする責任のある上司として、部下に指示や命令を出す関係性は続いています。たとえ仕事内容が理解できなくても、うまく関係性を構築して情報を引き出し、的確な指示を出さないといけません。
組織開発の定義には大きく分けて3つあります。
1つ目は、行動科学の理論と手法を用いていることです。行動科学とは人間の行動を学問的に研究し、体系化したものになります。細分化した行動にスポットを当てることで、結果に直結する行動へ改善できます。ビジネスのマネジメントに活用すると、結果だけでなくプロセスに対する評価や効果測定ができるといったメリットがあります。
2つ目は、組織の効果性と健全性を高めていることです。組織の効果性とは、組織の目標を達成する力や環境の変化に対処できることを指しています。健全さとは、組織で働く社員の幸福度やワークモチベーションの高さです。効果性と健全性を高めることで、自走できる組織の状態をつくります。
3つ目は、計画的な働きの取り組みがあることです。組織開発では単発の取り組みではなく、組織の目指すビジョンに基づいた計画を立て、定期的かつ長期的な取り組みを行います。
そして、組織開発の目的も3つあります。
1つ目は、組織内で新しいことにチャレンジしようとする風土をつくり、組織の革新力を養うことです。常に変化し続ける市場に対応していかなければならないため、組織の変革は重要になります。
2つ目は、人事が積極的に組織や現場に介入し、第三者の観察と分析で問題解決に役立てることです。当事者では気づけないものも第三者からは見えることがあるため、早く問題を解決できる効果があります。
3つ目は、ほかの社員との接触が少ないことで生じ得る誤解や相違などの問題を回避することです。社員同士のコミュニケーションを活性化することで摩擦が起きる頻度を減らし、スムーズに仕事が進む環境づくりを目指せます。
具体的に組織開発を行うためには、以下の7つのプロセスが大切です。
1.計画を立てる
企業の理念やビジョンに基づき、まずは目標を定めます。そのために「誰が、何を、どうやって、いつまでに」といった計画を立てることから始めましょう。
2.スモールスタートさせる
一部の部署やグループだけ取り組むのではなく、組織全体で関わる意識が大切です。とはいえ、最初から全員で改革に取り組むのは難しく、現実的ではありません。組織の一部からスタートし、徐々に広げていきましょう。
3.トップによるメッセージを発信する
組織のトップが組織開発を宣言し、メッセージを発信していきます。発信メッセージには企業理念や、企業としての目標などを織り込み、組織全体で共有します。トップから情報発信することで本気で取り組む姿勢を社員に伝えられるため、組織一丸となって組織開発を進められます。
4.組織の有効性・健康を高める
支援を得たい部署に対しては、素早い対処が必要です。一部の部署に大きな負荷をかけずに取り組むことで社員のモチベーションを高め、無理なく組織開発を進めます。
5.行動科学を駆使する
行動科学を用いて目標結果に直結する行動を分析します。その結果を基に各部署の管理者が主導で行動目標を社員に周知し、組織内で改善できるようマネジメントします。
6.適時目標を修正する
あらかじめ決めていたタイミングで効果測定や再評価を行います。目標との差が大きい場合、その理由を分析して目標を再設定します。常に状況をマネジメントし、必要であれば改善していくことが重要です。
7.フィードバックを行う
定期的に組織開発を行った結果を組織全体に共有します。共有内容には組織開発による成果を織り込み、具体例や数値を示しましょう。そうすることで組織開発による効果が実感でき、社員のモチベーション向上につながります。
人の関係性は仕事の結果や質に繋がります。例えば、社内のコミュニケーションが滞っている状態では、お互いのアイデアが活かされなかったり、仕事のミスが生じたりします。つまり、行動科学で言う「プロセス・ロス」が起こるのです。このような人の関係性や問題点を自分たちで気づき、改善していくことが重要になります。うまくいっていないことに気づいたら、自分たちで働きかけて改善していく。それが組織開発のアプローチです。
組織開発を成功させるには、部署や役職に関係なく社内の可視化が大切です。誰がどのような業務を行っているのかを把握するために、インターネット環境が不要で、誰でも閲覧しやすい社内報を利用してみるのもひとつの手段です。
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