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業務の効率化や社員コミュニケーションの向上は、多くの会社が取り組んでいる課題です。しかし、はっきりとした成果を得られないまま、悩んでいる上層部も珍しくありません。こうした現状を打開するために提唱されている手法が「ピープルアナリティクス」です。正しくピープルアナリティクスを取り入れると、適材適所で社員にのびのびと働いてもらうこともできます。
この記事では、ピープルアナリティクスの活用方法や可能性について解説します。
社員の能力が発揮されていなかったり、社員間のコミュニケーションが滞っていたりする会社では、社員が適材適所で配置されていない可能性を探りましょう。有能な人材でも、適性とは異なる役割を与えられると能力を引き出されにくくなります。
社員ごとに適性を解析し、人事に応用していく取り組みが「ピープルアナリティクス」です。ピープルアナリティクスは別名「職場の人間科学」とも呼ばれており、すでに多くの会社が取り入れています。
ピープルアナリティクスの根幹は「人材のビッグデータ」です。社員に関するさまざまな行動データを収集し、分析を行うことで社員の行動パターンを客観的に調べます。ここで用いられるビッグデータは、実際の仕事に関するものだけではなく、日常のささいな行動も対象となります。
管理部門はピープルアナリティクスにより分析したデータを基準として、従業員に適した部署への配属などが可能です。データは人間の主観や思い込みを排して算出された結果なので、偏見のない人事が実現します。結果的に、業務の効率化と仕事の質の向上が期待できるのがピープルアナリティクスの大きなメリットです。
正確にピープルアナリティクスを行うには、まずはビッグデータの収集が重要です。管理者は日常的に、社員のビッグデータには注目し管理していく意識を身につけましょう。
ビッグデータは、社員の行動に関するすべての記録を取得できます。いつどこにいたか、休日をどうとったか、誰と会話したのかなどのデータを収集して分析に役立てます。また、パソコンのログデータや、会社から支給した携帯電話の通話履歴などもビッグデータの一部です。
ピープルアナリティクスでは、センサーが組み込まれたカード型やウェアラブル型端末を使用します。
「ウェアラブル型」とは、時計タイプやメガネタイプなど、体に装着したまま操作できる端末のことです。プライバシーにも踏み込みかねないため、前提として社員の了解は必要ですが、センサーによって勤務時間内の行動はすべて、ビッグデータとしてシステムに取り込まれます。
ビッグデータは量が多ければ多いほど正確な解析が可能です。例えば、「ソシオメトリック・バッジ」というセンサーでは1年分の行動データが保存できるので、その間は社員にセンサーを身に付けて社内外での仕事をしてもらいます。ビッグデータはあらゆる状況における、社員の行動パターンや感情の動き、得意分野や苦手分野を明らかにしてくれます。
ビッグデータに基づくピープルアナリティクスは社員の「行動」と「感情」の記録を管理者に伝えてくれます。
例えば、ある社員がどんな分野について熱心に時間を割き、どれだけの成果を挙げているかも、ある程度は把握できるでしょう。また、特定の周期で遅刻や欠勤が相次いでいるようなら、社員のメンタルヘルスには明確な特徴がある状況と判断できます。つまり、その社員にとって与えられた環境が適していない可能性があるので、人事異動の対象に入れるという対応に結びつきます。
既存の社員のみならず、ピープルアナリティクスは人材採用への活用も期待できます。特に、応募者の人格や能力適性を見抜くためにはおおいに役立つでしょう。これまでの採用過程では、試験や書類審査、面接によってしか応募者の人間性を調べる機会はありませんでした。そのため、応募者がその場限りの対策さえ実施すれば、能力適性が低くても採用過程を突破してしまうケースが少なくなかったのです。
しかし、ピープルアナリティクスを用いれば、面接などに呼ぶ前の段階から応募者の行動や感情のデータを手に入れられます。応募者に合った部署や上司との相性の検討などを踏まえて、採用するかどうかを判断できるでしょう。また、採用決定後の配属先を探すためにもデータは参考になります。
ピープルアナリティクスは、職場環境の改善や業務の効率化にも効果が期待できます。
例えば、データ分析によって本人さえも気づいていなかった社員同士の相性も浮き彫りにできます。プライベートでは仲の良い社員同士が、仕事でも相乗効果を発揮できるとは限りません。純粋に仕事の効率面を考慮した理想の席順を明確にすることでも、ピープルアナリティクスは役立ちます。また、スムーズに社員コミュニケーションを活性化させたいならオフィスのデザインにもピープルアナリティクスを利用することができるでしょう。
これまで社内では常識とされてきた慣習も、ビッグデータを細かく分析すれば改善の余地があるかもしれません。「休憩時間」や「社則」などのルール作りにピープルアナリティクスを用いることもできるでしょう。休憩のタイミングや回数は適正か、社員のリフレッシュに貢献できているかを、客観的なデータ分析で明らかにすることができます。おやつや夜食といった習慣をきびしく管理している会社もありますが、本当に業務効率と関係があるのかを一度調べてみてもいいでしょう。
データを活かして快適な環境づくりや、効率的な業務の流れを実現すれば、業績アップにつながるだけでなく社員のメンタルヘルスのケアも行えます。
ピープルアナリティクスの代表的なメリットは、人事やオフィスデザインを客観的に行える点でしょう。目的に合わせて、担当者の主観的な判断を入れずに適材適所の配属、配置を徹底できます。当事者すらも気づけなかった適性や問題点を明らかにできるので、苦手な仕事で潜在能力を発揮できない社員を生み出す可能性が少なくなります。その結果、社員の定着率も高まり、マンパワーの充実した組織作りが促進されるでしょう。
ただし、ピープルアナリティクスにはデメリットもあります。例えば、ビッグデータ収集段階でのプライバシー侵害は懸念材料のひとつです。四六時中、センサーを付けられた社員は発言や行動の自由を奪われた状態ともいえます。忖度感情から、本来の意思とは違う行動を選択してしまい、「正確なデータ」とは呼べなくなってしまう恐れも出てきます。
もちろん、データ収集中は会話の内容などが記録に残るわけではありません。また、ピープルアナリティクスは社員の能力や行動を見極めるためのポジティブな分析であり、不真面目な社員を罰するなどの目的がないと明らかにしておきましょう。監視目的ではないと社員に説明し、メリットを伝えて理解を得ることがピープルアナリティクスの成功を左右します。
ピープルアナリティクスは、社員自身も気づかない快適な環境作りを、主観を入れずに可能にできる手法です。成功すれば、適材適所に人材を配属し、発揮しきれていなかった会社の潜在的な総合力を向上させることも夢ではありません。また、伸び悩んでいた社員にも成長のきっかけを与えられるので、モチベーションアップにも役立つでしょう。ただし、ビッグデータ収集時点でのプライバシー問題については、利用する側の説明と理解が必要です。
ピープルアナリティクスの意味をポジティブに捉えて導入し、あくまで「社員の適性を見極める」ことに集中しましょう。また、 社員の賛同を得るためには、社内報などを通してピープルアナリティクスを説明するのも効果的です。
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