社内報のつくりかた
一般的に、ブランディングとは、企業が自社の固有の価値やビジョンを明確に打ち出し、一般消費者や取引先、投資家に認知してもらうことを目的に行う活動のこと。業態にかかわらず、多くの企業が重要施策のひとつに位置づけて取り組んでいます。テレビCMの放送や、新聞・雑誌への広告の出稿、自社の企業理念との親和性の高い趣旨を掲げるイベントへの協賛など、切り口はさまざまですが、いずれも「社外」へのはたらきかけという点で一致しています。
これに対し、「社内」、つまり自社の社員へのはたらきかけを目的として行われるのが、インナーブランディングです。日本では、2010年代以降、インナーブランディングの重要性に着目して取り組みを始める企業が増えてきています。
インナーブランディングが重要視されるようになった背景には、従来の対外的なブランディング活動(=アウターブランディング)の“限界”が横たわっています。商品やサービスの品質を高め、その魅力を最大限訴求することができたとしても、アウターブランディングのみでは、顧客との媒介役を担う社員のふるまいや姿勢にまで影響を及ぼすことは困難だからです。どれほど優れた商品を世の中に送り出していても、社員のふるまいがそれに見合ったものでなければ、顧客からの評価は厳しいものになるでしょう。電話応対や、窓口対応する社員のふるまいは、提供される商品やサービスそのものの価値とは本来は関係がないはずですが、その企業に対する顧客の心証に少なからぬ影響を及ぼします。
企業活動の至上命題と言うべき「顧客満足(CS)」を追求するために、社外へのアウターブランディングと、社員を対象とするインナーブランディングを両輪で推進し、定着を図っていくことが肝要です。
商品やサービスといった、事業におけるアウトプットだけでなく、それを生み出し、顧客へと手渡す瞬間に至るまでのすべての企業活動に、一貫したブランドイメージを反映させるために、インナーブランディングが大きな意味を持つのです。
インナーブランディングを実現する手段は、軸となる理念を説いた媒体を制作し、これを活用する「理念展開」型の取り組みから、社員の年次や所属に応じたプログラムを通じて理念の習得を促す「教育・研修」の実施まで、さまざまなものが考えられるでしょう。
前者の「理念展開」型の具体例としては、ブランドブックの制作や、クレドやスローガンの作成などが挙げられます。従業員が高いホスピタリティを持ち、一流のサービスを提供することで有名なホテル、リッツ・カールトンでは、従業員全員がクレドを共有し、行動する際の規範にしているといいます。
<理念展開型の具体例>
・ブランドブック…ビジュアルとテキストの両面で目指すべきイメージを訴求し、企業理念の浸透を図るものです。
・社内向けサイト…社員だけがアクセスできる専用サイトを立ち上げ、イメージ動画なども活用しながら、ダイナミックに訴えかけるものです。
・クレド、スローガン…クレドやスローガンは、具体的な行動とのひもづけを意識した内容で、携帯しやすい小冊子やカードの形式で配布されるケースが多いようです。
一方の「教育・研修」は、とくに顧客との接点が多いサービス業で重視され、充実したカリキュラムが組まれていることが多いようです。広告宣伝費を教育費に充てて手厚いスタッフ教育を行っているスターバックスは、研修に重点を置いたインナーブランディングの成功例としてしばしば引き合いに出されます。
「理念展開」のための制作物、そして「教育・研修」。アプローチは異なるものの、どちらも目指すところは、社員一人ひとりに企業理念に根ざした「マインド」を醸成し、具体的な「行動」を促すことにあります。
「理念展開」を目的として制作されるブランドブックや専用サイトは、いわば「特注アイテム」です。でも、既にお気づきのはずです。「特注アイテムもいいけど、その前に、社内報があるじゃない」と――。
そう、「インナーブランディング」を推進するうえで、社内報を活用しない手は無いはずです。そもそも、行動のベースとなるマインドの浸透は、一朝一夕で実現するものではありません。理念として掲げられた言葉をなぞるだけでは、“何となく知っている”、“何となく分かっている”という上辺だけの理解の枠を出ません。インナーブランディングの到達点を、社員一人ひとりが、理念を通して日々の業務を見つめ直し、そこから“気づき”を得ることによって、自身の行動を必要に応じて軌道修正する力を獲得すること。――このように定義すると、一つのテーマに様々な角度から迫り、しかも継続的に、全社員に向けて展開することのできる社内報は、「インナーブランディング」の重要なツールになり得るはずです。
「企業理念」を例に、社内報で連載する場合の切り口を考えて見ます。
・おさらいしよう編:会社HPの企業概要ページにあるような「企業理念」の紹介に補足を加えて、再確認を促す。
・成り立ちを知ろう編:「企業理念」が策定された当時を知る人物や資料が現存していれば、策定の背景や意図に迫る。
・先輩に学ぼう編:社歴10年以上など、一定年数以上の経験を有する社員数名にインタビューを実施し、自身の経験から「企業理念」を体現するようなエピソードを披露してもらう。
・私のミッション編:若手社員を対象に「企業理念」を念頭においた行動目標を立て、自分の言葉で発表してもらう。
この展開例では、企業理念そのものに迫るのはもちろんのこと、企業理念と社員の“かかわり”に着目しながら、幅広い年代にフォーカスしていくことで、社員一人ひとりが企業理念をさまざまな角度から再認識し、意識できるようなきっかけを提供することを意図しています。
「インナーブランディングを始めたいが手段を決めあぐねている」「新規媒体を制作してインナーブランディングを試みたが今ひとつ浸透していかない」といった悩みに、毎号の社内報が、地道だけれども着実な答えを示してくれるかもしれません。
新着記事
Web社内報とは?媒体を紙からWEBへ切り替えるメリットについて
Web社内報とは?媒体を紙からWEBへ切り替えるメリット...
社内報で動画を活用するメリットとは?「活字離れ」社員にも共感を生む方法
社内報で動画を活用するメリットとは?「活字離れ」社員にも...
無料でお役立ちフォーマットがDL!「社内報のきほん by glassy株式会社」
無料でお役立ちフォーマットがDL!「社内報のきほん by...
メディア型とSNS型。あなたの会社に合うコミュニケーションツールはどっち?
メディア型とSNS型。あなたの会社に合うコミュニケーショ...