社内報のつくりかた
目次
[はじめに]
こんにちは!ライターのkumaです。
企画・編集・ライティング・デザイン、そして印刷――。社内報の制作は、多くの工程から成り立っています。このうち、できることなら社内で対応したいけれど、いざとなると尻込みしてしまう…そんな工程の筆頭が、「ライティング」ではないでしょうか。
そこで、この連載(前後編2回)では、次のような方を読者に想定し、ライティングを行う際のコツをまとめています。
[こんな方に読んでほしい]
・「ライティングって何から手をつけたら良いの…?」という新任担当者の方。
・「この機会に“自己流ライティング”を見直してみたい」というベテラン担当者の方。
[本題に入る前に…社内報編集担当者に必要な「ライティングスキル」って?]
「ライティングスキル」と聞くと、文章の巧拙にかかわる素養を指す言葉だと思われるかもしれません。豊富な語彙力を駆使して、精度の高い表現を選び取る力。読者にとって心地よい調子で、一文一文を書き連ねる力。たしかに、「巧みな文章」を書くためには、こういった素養が必要です。
しかし、社内報の編集担当者が備えるべきは、こういった素養とは別物であると私は考えています。社内報担当者に必須のライティングスキル。それは、次の2つです。
・「扱う情報に敬意を持つこと」
・「情報の伝達に熱意をもつこと」
なんと抽象的な…! と思われるかもしれませんが、断言しましょう。「手に入れた情報を丁寧に扱い、そのエッセンスを余すところなく伝えるための努力」を惜しまない人の書く文章は、時に拙かったとしても、「社員に訴えかける力を持った文章」であると。 カギは、語彙力や表現力ではなく、原稿作成のプロセスそのものにあります。 私がライティングの際に実践しているプロセスを、1ステップずつ順を追ってご紹介します。
前置きが長くなりましたが、目次の紹介に続き、本編スタートです。
最初のステップは、拍子抜けするほど簡単。ライティング対象となるページの、「構成要素の確認」です。
ぜひ、過去号を開いてみてください。コーナータイトルがあり、概要を伝えるリード文があり、大見出し、小見出し、ミニコラム…。「本文」以外にも、紙面にはさまざまなテキスト要素が存在しています。それぞれの要素が、どの程度のボリュームがあり、どのような内容を担っているのかという、ページ上の役割分担を把握します。
それぞれの役割が明確になると、後のステップでプロットを作る際に、「本文以外」でも伝えられることと、「本文」でなければ伝えられないことの区別がしやすくなります。
また、完成イメージを具体的に思い描くことで、「情報収集」の精度も高まります。取材ならば、最低でも何を・どのくらい取材対象者に語ってもらう必要があるのか。資料ベースならば、どういった観点の資料を集める必要があるのか――といった、「必要なINPUT」の把握が容易になるためです。
次のステップは、料理ならば「素材の下ごしらえ」に相当します。多少の手間はかかりますが、より美味しく仕上げるために必要な作業です。また、ある程度慣れてくると、ライティングにかかる時間の短縮化にもつながります。
具体的な作業の説明に入る前に、ライティングにおける情報ソース(料理でいう「食材」ですね)を確認しておきましょう。概ね、次の3種類に分類できます。
(取材そのものについては、ここでは詳しく触れません。このサイト内に「インタビュー」のタグが付いた関連エントリが複数あるので、ぜひご覧ください)
【原稿の情報ソース】
・「資料」…広報やIR発表資料、PJの成果報告をまとめたプレゼン資料等、社外向け・社内向け文書。
・「取材(音声ベース)」…対象者は、個人あるいは複数名。音声の録音が必須。対面に限らず、Skype等を利用して行う場合も。
・「取材(テキストベース)」…取材時間が確保できない場合は、質問項目を伝えてWordやメール上で回答を得る方法も。
さて、上記の3種類のうち、一つだけ音声ベースのものがあります。しかし、取材後は基本的に発言を全て文字に起こす(※1)ため、最終的な形態はいずれも「テキスト」です。
通常、これらの「情報ソースとしてのテキスト」(Before)は、「最終的な原稿」(After)よりも大幅にボリュームがあります。ワード数の比較ならば、Before:Afterが2:1というのはまだギャップが少ない方で、3:1、5:1ということも珍しくありません。
それならBeforeからAfterに至る過程で情報量も半分以下になっているのかというと、そんなことはありません。(もちろん、情報ソースの中の枝葉末節〈ディテール〉は削ぎ落とされることになりますが…)きちんとしたプロセスを踏んだ原稿には、情報ソースの中の核となるエッセンスが過不足なく盛り込まれているものです。限られた文字数の中で、核となるエッセンスを取りこぼしなく盛り込むための「下ごしらえ」の方法を、以下に箇条書きで紹介します。
熟読のしやすさ、後述する書き込みのしやすさから、モニター参照ではなく紙に出力することを推奨します。
小さめの文字が苦ではない方なら、全体を俯瞰しやすい2面印刷がおすすめです。
この作業がStep2のハイライトです。
「意味内容の切れ目」は、その一文に、「ラベル貼り」をするならキーワードは何か? という観点で文章を読んでいった時に、ラベルの変更が必要となるポイントです。
取材なら、音声ベース、テキストベースいずれの場合も、「質問→回答」のセットなので、すでに大まかな情報整理はなされています。ただ、多くの場合、取材の回答には、質問に対するピンポイントのアンサー+αの情報が含まれているもの。この「+α」の部分を見逃さないように、注意深くテキストを読みながら、鉛筆で印をつけたり、ペンでマーキングしたりすることで、意味内容の切れ目を可視化していきます。
以下、具体例です。
取材対象者は、新規開業した店舗のリーダー。開業後初めて実施したイベントの手ごたえについて質問しました。
〈回答〉
「想像以上に、多くのお客様に足を運んでいただくことができました。スタッフ一同、非常に嬉しく思っています。各種PRの成果ももちろんですが、“新しいもの好き”の方が多い県民性によるところも大きいと考えています。実際、お客様へのアンケートでも、「新店を見てみたかったから」という声を多数いただいています。別の見方をすれば、目新しさが薄れた時こそ、競合といかに戦っていくかが問われると思っています。競合は、当社よりも数年前から県内に進出しており、サービスレベル、施設のクオリティともに非常に高いものを持っています。同社をおさえてエリアNo.1のポジションにつけるのは容易ではないと感じていますが、着実に、一歩一歩、お客様に選ばれる店舗づくりを進めていきます。」
上記の回答を、意味内容の切れ目で整理するとどうなるでしょうか。
青は、イベントの感想。質問に対するピンポイントの回答の部分です。
緑は、結果に対する要因分析。
赤は、競合を踏まえた課題感。
黄は、今後への意気込み。
――となります。
厳密には、緑はさらに細分化(「各種PR」と「県民性」)することができますが、それでも4つの要素に切り分けることができました。
この要領で、テキストの最初から最後まで熟読し、要素を全て棚卸しします。
テキストの要素を一通り整理し終えると、あることに気付くはずです。「あれ、別のところにも同じラベルの情報があったな」と。そう、1つの要素が1度しか登場しないということは稀です。多くの場合、同じ要素が、切り口や、情報の厚みを多少変えながら、複数の箇所に登場します。
同じ要素同士をひもづけて把握することまでできたら、Step2は完了です。(お疲れ様でした!)
ただし、慣れないうちや、元のテキスト量が膨大な場合は、新規のWordファイルを作成し、要素ごとに集約してコピペしておくことをおすすめします。このひと手間で、エッセンスの取りこぼしを防ぐことができます。
(※1):「文字に起こす」「文字起こし」とは、音声データを聞きながら発言をテキスト化していくこと。発言を一言一句そのまま起こす場合もあれば、語尾のニュアンスなどを適宜“丸めて”発言の要点のみ起こす場合もあります。(日常ではカセットテープほとんど見かけなくなった平成末期の今日ですが、編集の現場では「テープ起こし」という言葉は健在です。カセットテープを知らない世代にとっては、きっと不思議な単語ですよね。)
いよいよ、プロットの作成に入ります。プロットとは、言わば原稿の見取り図。原稿の要点と、話題の展開順序をまとめたものです。“まとめたもの”と言っても、体裁のルールがあるわけではありません。自分が原稿の全体像を思い描くことができさえすれば、箇条書きで構いません。
題材によって、原稿の切り口は様々。自ずとプロットもそれぞれ異なったものになります。ただ、困った時は、 「原則として時系列」! これを思い出してください。(「時系列」は、元は統計学の分野の用語のようですが、ここでは “過去から未来へ、時間の流れに沿って” という程度の意味です)
プロジェクト紹介ならば、「立ち上がり→進行中のエピソード→成果→今後の展望」となりますし、ロールモデルとなる社員の紹介ならば、「入社当初→ターニングポイント→今日の活躍→今後の展望」という時系列に沿った話題展開がオーソドックスな流れです。
これに対し、例えば、沿革や来歴を通しで解説するコーナーが別途設けられている紙面であれば、本文内では「現在」に絞って、厚く記述することができます。(Step1の要素確認がここで活きてくるわけです)
さて、これにて前編は終了です。後編からいよいよ、実際のライティングに入っていきます。
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